インプラントと天然歯の違い
インプラントは、見た目や使用感が天然歯とほぼ同じであることが特徴ですが、天然歯との違いは一体何なのでしょうか。
インプラントと天然歯の違いをチェック
基本的に、インプラントと天然歯はまったく違うものであると考える必要があります。インプラントは、確かに天然歯と同じような見た目や使用感を持っていますが、生体ではありません。歯を支えている周囲組織である「歯周組織」などの根本的な構造から、感覚機能や圧力がかかった際の反応など、機能面でも以下のように大きな違いがあるのです。
1.天然歯には歯根膜という緩衝材がある
天然歯には、「歯根膜」という膜が存在します。歯根膜は歯根と歯槽骨の間にあり、歯を噛み合わせた際に力を分散させる緩衝材のような役割を果たしています。天然歯は、この歯根膜によって歯や骨にかかる衝撃や力量をコントロールしているのです。
一方、インプラントには歯根膜が存在していないため、歯槽骨とインプラントが直接隣り合っている状態となっています。歯根膜による緩衝材としての機能が働いていないので、歯ぎしりや不適切な噛み合わせによる過剰な力が直接インプラントに伝わってしまいます。そのため、天然歯に比べてこうした衝撃を受けやすいのです。
2.繊維方向の違いによる感染症などへの抵抗力の差
天然歯には、歯根面に対して垂直に走る繊維が存在しています。一方、インプラントに走っている繊維は水平方向です。歯根面に対して水平的な繊維は、垂直的な繊維に比べて剥がれやすく弱いという特徴があるため、インプラントは感染症や炎症に対する抵抗力が天然歯よりも弱くなっています。また、影響が深部にまで及び、重症化する可能性もあります。
3.血液供給量の違いによる細菌などへの抵抗力の差
通常、歯と歯肉の間には1?2mm程度の隙間が空いており、ここに食べかすや歯石・細菌が溜まると歯周病菌が繁殖して炎症を起こすことがあります。すると、この隙間の周辺の歯肉が腫れ上がり、「歯周ポケット」と呼ばれるふくらんだ空間ができます。このように歯周病が進行すると、血液中の成分の1つである好中球が活性化し、細菌に対して抵抗を始めます。天然歯は、歯肉・骨・歯根膜の3方向からの血液供給によってこの好中球が出現しやすくなっており、内部になんらかの細菌が繁殖しても排除する力が十分に働くのです。
一方、インプラントには歯根膜が存在しておらず、歯肉・骨の2方向からのみの血液供給となっていることから、好中球の出現量が少なく、細菌に対する抵抗力が天然歯よりも弱くなっています。こうした理由から、インプラントは炎症を起こしやすい上に、一度炎症を起こすと天然歯よりも速いスピードで骨の吸収が進み、骨がやせていってしまう可能性があるのです。
また、インプラントはこうした感染や炎症を引き起こしても痛みや腫れの自覚症状を感じにくく、発見が遅れて重症化する可能性もあります。そのため、検診で定期的に状態を確認したり口内を清潔に保ったりするなど、日頃から注意をしておくことが大切なのです。